映画「ヒメアノ~ル」 感想・評価 

ヒメアノ~ル
先日、家内とヒメアノ~ル(出演:森田剛)見てきました。
その感想です。

ヒメアノ~ル
原作は古谷実。
古谷実といえば「行け!稲中卓球部」が最も有名であり個人的にも傑作であると思います。

ただし、この人は
・ヒミズ
・シガテラ
・わにとかげぎす
・ヒメアノ~ル

といったようなサスペンスやサイコスリラーものが得意で、本人もそういったジャンルを書くことが好きなんだろうなあと思います。

かく言う私も、ヒミズ以降の古谷実の作品が大好きで「シガテラ」「わにとかげぎす」「ヒメアノ~ル」は全部買いました。

古谷実が憧れる女性像

シガテラ、わにとかげぎす、ヒメアノ~ルに共通するのは、冴えない主人公に理想的な女性が現れるというところです。
それは年上のお姉さん的な存在の彼女であったり、年上じゃなくても精神的に年上といった感じです。

ヒメアノ~ル
ヒメアノ~ルでは25歳の主人公(進)に21歳の彼女(ユカ)ができます。

4つ下の彼女となりますが、童貞の主人公に対して彼女の経験人数は10人以上。
さらには、昔の彼氏にピンクローターを試されたという経験もあります。

そんな彼女は、コンドームの裏表の区別もつかない主人公に対して、若干困惑しながらも優しくセックスをリードしていきます。

つまり、年齢は年下でも精神的には主人公よりも大人なわけです。

これに関しては古谷実自身の投影といって間違いないでしょう。
自分よりも精神的に成熟した女性に甘えていたいという願望が作中に現れています。

そして、私が古谷実のこれらの3作品にのめり込んだのも、私自身も古谷実と同じく成熟した女性に憧れているからということに他なりません。

その分かりやすい例が高校生時代のバイト先の先輩アルバイトです。

私は高校生時代にいくつかバイトをしていましたが、先輩アルバイトとして短大生や大学生の先輩女性アルバイトが存在しました。

そういった人達は、遊びの知らない高校生の私の目には物凄く魅力的に映りました。
結局、内向的な私は休憩時間にすらロクに話すこともできない状態でしたが、中には同級生で短大生の彼女をバイト先で見つけたりする奴がいたりなどして、そういった世界は理想郷とも想像できないほど自分自身とはかけ離れた無縁のものでした。

おそらく、古谷実自身もそういった女性像に惹かれていたと思います。
その典型として分かりやすいのが、シガテラの主人公とそのヒロインとの出会いのシチュエーションですね。

サイコキラーを演じる森田剛

ヒメアノ~ル
男性アイドルグループ「V6」のメンバーとして活躍した森田剛もすでに37歳。

アイドル絶頂期であればヒメアノ~ルに出演してサイコキラー役を演じることは考えられなかったが、現在であればこういった役柄をやるのもありだろう。

殺人・強姦といったあらゆる暴力が作中で行われる。

薬物で捕まった清原和博ほどじゃあないけど、森田剛もピークはとうの昔に過ぎ去って、今ではメディアに出ることもほとんどない。

そういった落ち目のアイドル・俳優が演じた、ヒメアノ~ルのサイコキラー役も森田剛の現状と重なってリアリティがあった。
原作でもサイコキラー役のキャラ名は森田だったわけだし、もう彼が演じるのが運命づけられた役柄なんじゃないかと思う。

作中での暴力行為もR15指定ということもあって、なかなか良い感じ。
特に私が一番気に入っているのは、森田を殺そうとした和草と久美子を返り討ちにして、久美子の尻を鈍器でいたぶりながら絶命に追い込むシーン。

通常であれば、とても見るに耐えない映像なのだが、絶望と激痛に悶え苦しむ久美子はこの上なくエロティックである。

映画「ヒメアノ~ル」感想まとめ

1本の映画としてまとめているので、原作を簡略化している部分は当然あるが、構成としてはすごく良かったと思う。
どこを残して、どこをカットすべきなのか、その判断も問題ありませんでしたね。

デスノートとかドラゴンヘッドとか進撃の巨人とか、色んなビッグタイトルが映画化されたけど、どういうわけかそのほとんどが駄作ばかり。

それに対して「ヒメアノ~ル」は原作を忠実に再現するだけでなく、120分間で映画として成立させるためのドラマ性もよく表現されていました。

基本的に原作好きの人であれば無難に楽しめることは間違いないですね。

そして私の感想としては、サイコキラー森田の残虐な描写よりも、精神的に年上である彼女からの優しい手ほどきが印象に残っています。
セックスの最中のあえぎ声がアパートの外に漏れて、それを聞いた森田が殺人を決意するシーンがあるのですが、その時のシーンはどんなアダルトビデオよりもエロいと思います。


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