タクシードライバー (1976年米) 自己顕示欲の極み
最も好きな映画は何かと聞かれたら間違いなく「タクシードライバー」(1976年米)と答える。
たぶん、今後もこれ以上に好きになる映画は存在しないだろう。
15歳の時にレンタルビデオショップでたまたま見かけたこのパッケージに惹かれて、その後も気になっていたのだが実際に見たのは17歳の夏休みだった。
しかし、意味はまったく分からず面白くもなんともなかった。
当時の私はバック・トゥ・ザ・フューチャーやジュラシックパークといった冒険活劇物くらいしか見ていなかった為にタクシードライバーといったアメリカン・ニューシネマというジャンルに分類される映画の楽しみ方が分からなかったのだ。
1960年代後半 – 70年代にかけてアメリカで製作された、反体制的な人間(主に若者)の心情を綴った映画作品群を指す日本での名称。
-Wikipediaより-
その後、22歳の時にもう一度タクシードライバーを見る機会があった。
当時の彼女(今の妻なのだが)とレンタルビデオショップに行った時に何となくまた見てみようと思って、彼女も興味を持ってくれたので借りてみたのだ。
しかし、その時もさほど面白いとは思わなかった。
ただ、何となく雰囲気が好きというか見ていて悪い気分ではなかった。
そして、その次に見たのは就職後の25歳の時だったのだが、その時にこの映画の面白さに気づいた。
ちなみになぜその時にタクシードライバーを借りたのかは憶えていない。しかも見るのは3回目だったのに。
ストーリーは以下のようなものでかなり支離滅裂である。
②ある選挙事務所の女に恋をする⇒デートするがフラれる
③ふと見かけた未成年の売春婦を更生させようとつきまとう⇒ウザがられる
③大統領候補の議員を暗殺しようと計画する⇒銃を買う。筋トレする。⇒未遂に終わる
④売春婦を取り仕切るマフィアに喧嘩を売る⇒クライマックスへ
要するに、彼女も友達もいなくて暇なのである。
その上、社会との接点が何もないので何かその接点というか自分の存在価値を世の中に知らしめたい。
だから、売春婦を説得する、大統領候補暗殺を企てる。
ただ、それだけの話。
しかし、この「自分の存在価値を世の中に知らしめたい」って気持ちすごくよくわかる。
つまようじ混入事件の青年がその典型。
友達も彼女もいなくて社会との接点が何もないのだが、孤独だからこそ何か注目を引くことをやって「自分の存在価値を世の中に知らしめたい」と思っている。
私は間違いなくこのタイプの人間なので、タクシードライバーの主人公(トラビス)には共感したし、このつまようじ青年の気持ちもわかる。
「自分の存在価値を世の中に知らしめたい」ってことで
トラビスは「選挙事務所の女を物にしたいと思う」「大統領候補暗殺を計画する」「売春婦を更生させようとする」
つまようじ青年は「万引きする」「YouTubeを利用する」
私は「ブログを利用する」「Twitterを利用する」
面白いところは、目的の為なら善悪も混合されてしまうというところで「大統領候補暗殺を計画する」と「売春婦を更生させようとする」ってまったく相反することなのだが「自分の存在価値を世の中に知らしめたい」といった目的においては共通している。
また「自分の存在価値を世の中に知らしめたい」というのは心理学では自己顕示欲にあたる。
そしてこの自己顕示欲は人によって大きな開きがあるので、その自己顕示欲が低い人はこの映画が理解できないかもしれない。
しかし「孤独」「空気が読めない」「コミュニケーションが苦手」などという人には主人公にとても共感できて楽しめると思う。
何せこの主人公は選挙事務所の女とデートに行った時にポルノの映画館に入ってしまうほどの、空気が読めなさを持っている。
私自身も青少年期にそういった数々の痛い経験があるので、すごく共感できたというかこの主人公はまさしく私自身なのだ。
そうなるとこの映画がつまらないわけがない。
『タクシードライバー』は最も好きな映画であるだけではなく、今後もこれ以上に好きになり面白いと思える映画に出会うことはないだろう。
そして、映画の中で流れる音楽もよくてDVDのみならずCDも購入した。
タクシーのガラスに雨の水滴が降りかかって、そこからニューヨーク繁華街のネオンがボヤけて見えるシーンが何度もあるのだが、そのシーンに流れている音楽が惚れぼれするほどかっこいい…
「タクシー・ドライバー」オリジナル・サウンドトラック コレクターズ・エディション
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